ワークフローシステムを選ぶために複数社から情報収集をしたけれど、
どの会社の説明も分かりやすく、聞きたかった機能はひととおり揃った。
そして手元の比較表もそれっている。
ただ、何を根拠に1社に絞れば良いのかわからない。そんなお悩みをよく伺います。
すべてのベンダーはしっかり回答してくれています。そしてほとんど○がついて戻ってきている状況かと思います。
その状況になるのは、比較表に書く質問の粒度が、製品の差が出る粒度より粗い可能性があります。
「条件分岐ができますか」「代理承認できますか」。この聞き方だと、答えはほぼ全社が○になります。
分岐に何を条件として使えるか、代理をどこまで限定できるか、というところまで深掘りができると、返ってくる答えが変わることがあります。
できるかできないかで言うとできるけど、深掘りをしていくとできないと回答が変わることがあるのです。
今回は、○が並びやすい領域を4つに分けて、それぞれ何を聞くと差が出るのかを整理します。
最後に、すぐに使える機能要件チェックリストのExcelのダウンロードリンクを用意しています。
例えば、総務部から上がってきた複合機5台のリース更新の稟議。
月額の合計は18万円で、契約期間は5年です。経路は課長、部長、総務部長、経理の4段になっています。
この1件を通すのに必要な設定を思い浮かべながら、比較表の項目を読み直してみます。
「承認経路の分岐ができる」に○が付いていても、月額で判断するのか、申請した部署や役職、プルダウンで年額or月額の選択肢で分岐を判断するのかで条件の作り方が変わります。
「代理承認ができる」に○が付いていても、期間を指定できるか、代理できる申請を限定できるか、など一段階深ぼりすると「できない」に変わることがあるのです。
○が付いているのは、その機能が存在するという事実までです。自社の運用に載るかどうかは、もう一段開かないと分かりません。
分岐の可否ではなく、条件に使える情報の範囲を聞くと差が出ます。
金額だけを条件にできる製品と、部署・役職・申請種別・フォームの入力値まで使える製品があります。
リース更新の稟議のように、月額と契約総額のどちらで判断するかが決まっている場合は、明細の合計や計算結果を条件にできるかまで確認しておきたいところです。
条件の組み合わせも聞いておくと安心です。「金額が一定以上、かつ本社以外の拠点」のような複合条件は、実際の決裁権限基準表では珍しくありません。
条件を1つしか設定できない製品では、経路そのものを分けて作ることになります。
あわせて、次の3つは聞き漏らされやすい部分です。
差し戻しの戻り先は、導入直後にいちばん指摘を受けやすい部分だと感じています。
金額の入力を1桁直すだけでも、戻り先が申請者に固定されていると、承認すべてをやり直すことになります。
導入時点では、どの製品も同じように見える領域です。差が出るのは、最初の人事異動が起きた後になります。
聞いておきたいのは、次の4つです。
最後の1つは、機能一覧に載っていないことがあります。組織の履歴を保持しない製品では、部署名を変更した時点で、過去の申請の表示も新しい部署名に置き換わります。
リース更新の稟議を承認した時に「総務部」だったはずが、翌年に部署名が変わり「総務グループ」になったとします。
当時の稟議を開いたときに、部署名が現在のもので表示されるのか、決裁したときのままなのか。5年契約の途中で監査を受ける前提なら、後者であってほしい場面です。
兼務も、登録できるかどうかと、経路が正しく回るかどうかは別の話です。実機で試させてもらうのが確実だと思っています。
フォームの作りやすさは、デモで必ず見せてもらえる部分です。見えにくいのは、その裏側にあるマスタの扱いのほうです。
リース更新の稟議には、リース会社名を入れる欄があります。ここを自由入力にすると、「株式会社」と書いたり「(株)」と書いたり申請者によってバラつきが生まれます。
マスタとして別に持てる製品なら、バラつきを出さずに確実に会社名を入力することができるようになります。
ただマスタの有無だけでなく、さらに深掘りをすることをおすすめします。たとえば、
最後の項目は、物理削除しかできない製品では、過去の申請の該当欄が空になったりエラーになることがあります。
申請と承認が終わったあとの話は、選定の場では後回しになりがちです。
聞いておきたいのは3つです。
まず、承認後に申請の内容を変更できないこと。金額を後から書き換えられる仕組みでは、決裁の記録としての証明力が弱くなります。
変更が必要な場合の手続きが、記録として残るかもあわせて確認したいところです。
次に、帳票の出力です。
従来の紙の様式で社外や監査に提出する運用が残っている場合、指定のレイアウトでExcelやPDFを出せるかが要件になります。
ここで見落とされやすいのが、帳票に承認履歴を差し込めるかという点。承認者名と承認日時が紙面に残らないと、押印済みの原本の代わりにはなりません。
出力するタイミングを選べるかも、あわせて聞いておくと安心です。
最後に、契約が終わるときのデータです。5年契約のリース稟議を、契約期間中ずっと参照できる状態にしておく必要があるとして、システムを乗り換えることになったらどう取り出すのか。出力の形式と費用は、契約前に確認しておく価値があります。
正直に言うと、私も一度ここでつまずいています。
比較表の作成をお手伝いしたときに、機能の有無の欄ばかりを増やしてしまって、結局どの製品も○が並ぶ表ができ上がった。開いて聞くべき項目と、聞かなくてよい項目の線引きは、いまも相談の場で迷うところです。
見るべきポイントは他にもありますが、聞き方の型は同じです。
機能があるかどうかではなく、どこまで制御できるかを聞いてください。
分岐に使える項目は何か、限定できる単位はどこまでか、その設定を誰が変えられるのか。この一段を足すだけで、返ってくる答えが自社にあった内容になります。
もう一つ、時間の軸を入れると差が見えやすくなります。異動が起きた後、様式を改訂した後、取引先の名前が変わった後、契約が終わった後。どの領域も、導入直後より少し先に効いてくる部分に製品の性格が出ます。
手っ取り早いのは、できないことを直接聞いてしまうことかもしれません。
「この運用だと、御社の製品では何が引っかかりますか」。ここに具体的に答えてくれるベンダーは、自社の製品が実際の運用に載る場面を見ていると思っています。
いちばん確実なのは、自社の申請を1件そのまま持ち込むことです。複合機のリース更新でも、備品の購入伺いでも構いません。
起票から決裁、帳票の出力、その1年後まで通してもらうと、比較表の○では見えなかった部分がまとめて出てきます。
どこまで細かく聞くべきかは、会社の規模と決裁の重さによって変わります。設定できる項目が多い製品が常に良いとも限らなくて、細かく設定できるほど管理の手間も増えていく。この線引きについては、私も答えを持ち合わせていません。
この4つの分け方が、比較表を1行ずつ開き直すときのたたき台になれば幸いです。
記事で挙げた4つの領域を含め、すぐにつかえるExcelを用意しました。
そのままベンダー各社へ送って、対応可否を記入してもらう形で使えます。
もちろん自社に合った項目にカスタマイズいただいて構いません。